病院内で医療品質の管理や院内製剤の調製を担う「試験室」の役割は、院内の円滑な医療提供の一助となる重要な業務です。今回は、病院実習において試験室が具体的にどのような活動をしているか、またそれがどのような医療現場のニーズに応えているかを深掘りします。
試験室の主な業務
試験室は、以下のような多岐にわたる業務を担っています。
- 院内製剤の調製
市販されていない特殊な製剤が必要な場合、病院内で製剤を調整します。これは、患者にとって特別な医療ニーズに応えるためであり、安定性や採算面で難しい場合も多く、必要不可欠な業務です。 - 院内製剤の分類
院内製剤は一般製剤と特殊製剤に分けられ、さらにリスクに応じて以下の3段階に分類されます。- クラスⅠ:注射剤など高リスクの製剤で、倫理委員会の承認と患者同意が必要
- クラスⅡ:投与経路の変更を伴う製剤で、倫理委員会の承認は必要だが患者同意は不要
- クラスⅢ:軟膏などの低リスク製剤で、報告義務はあるが承認は不要
- エビデンスに基づく情報収集と意思決定支援
医師からの製剤依頼に応じ、代替薬の有無や調整の必要性を吟味します。この過程では、メタアナリシスから症例報告までのエビデンスレベルを理解し、適切な情報をもとに製剤可否を判断します。
院内製剤の管理と品質の確保
調製過程では、品質管理が徹底されており、5年間の保存が義務付けられた調製票や同意書に以下の内容を記録します。
- ダブルチェック:製剤の調製は必ず二重チェック体制で行う
- ロット番号や検査結果の記録:製剤の品質と安全性を担保するため
現場での課題と工夫
試験室では、一般市販薬の不足や病院独自のニーズに応じて製剤が作られるため、調製にかかる手間やエビデンスの収集が重要です。また、限られたリソースで効率的に業務をこなすため、スタッフ間の協力や効率的な情報管理が求められます。
病院実習では様々な部署を回りますが、この試験室という部署を専属する薬剤師の配置というのは、大学病院などの比較的規模が大きい病院です。地域の病院などの規模が小さい病院では、試験室を担当しながら病棟や注射剤の調剤を行います。就職などを考える際はぜひ、この業務の回り方についても尋ねるのもいかがでしょうか。
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