日本の医療制度は、国民全員が医療保険に加入し、一定の負担で質の高い医療を受けられる仕組みです。しかしながら、保険が適用される治療(保険診療)と適用されない治療(保険外診療)を同時に受ける「混合診療」は原則禁止されています。これには医療費の負担を均等にするという目的があり、特定の人がより高額な治療を選べないようにするためです。
しかし、例外的に認められる混合診療のケースがあり、これにより治療の選択肢が広がる可能性があります。以下で、評価療養、患者申出療養、選定療養の具体的な内容と、それぞれの制度が患者や医療機関にどのように役立つのかを解説します。
1. 評価療養 ― 最新の医療を安全に実施するための仕組み
評価療養は、保険適用の対象とするかを判断するため、保険外併用が認められた医療です。治験や新しい医療技術の評価のために、企業や医療機関が主体となって実施します。
- 企業主導治験
製薬会社などの企業が主導する治験では、通常の医療費(再診料や基本的な診療部分)は保険適用されますが、検査費用や治験薬、同種同効薬の費用は企業が負担します。このため、患者の経済的負担は軽減されつつ、最新の薬や治療が試されます。 - 医師主導治験
医師や研究機関が主導する治験の場合、治験薬以外の費用がすべて保険適用され、特に経済的に負担が軽減されます。治験に参加する患者にとっては、企業主導治験と異なる支援体制が整っており、リスクを踏まえたうえで最新治療の選択肢を提供されます。さらに、入院が必要な場合、通常のDPC(診断群分類包括評価)制度は適用されず、出来高制が採用されることで、患者に適切な医療が提供されます。
2. 患者申出療養 ― 海外で承認済みの新しい治療を受けるための選択肢
患者申出療養は、日本で未承認でも海外で承認されている治療法や薬を、患者の要望によって利用できる制度です。この制度を活用することで、日本国内でまだ利用できない治療法にアクセスすることが可能です。たとえば、重病患者が海外の治療法に望みをかける場合など、医療の幅が広がります。
3. 選定療養 ― 患者の希望で選べる特別な医療
選定療養は、患者の希望に基づき、通常の保険診療に追加して利用できる特別なサービスです。具体的には、差額ベッドや時間外の予約診療、専門医による診療などが該当します。これは医療の質を高め、患者の満足度を向上させるための制度で、患者の選択に応じた柔軟な医療の提供が可能になります。
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